特集 医療の機能分化と連携
「かかりつけ医」の推進
糸氏 英吉
1
1日本医師会
pp.156-159
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901213
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■医療社会の変化
戦後のわが国は驚異的な経済成長をとげたが,現代社会の中でも今や国民にとって医療は日常化したといってよいくらいに,制度の面でも負担の面でもさらにまた,その質の面でも十分に恵まれたものになってきている.しかしながら国民皆保険制度の実施に伴って医療機関に患者があふれ,一方,医療の近代化,診断技術の機械化,情報化時代に伴う患者の医療ニーズの多様化・高度化によって,開業医と患者との心のふれあいが次第に希薄となって,病気を診て患者を診ないといったことも不本意ながら認めざるを得ない.そして,一部の開業医の中には,自分の都合のよい時間に都合のよい患者だけを診れば事足れりとする自己中心的思考が芽生えていなかったか,さらにまた,前時代的開業医の姿に安住して,近代医学の目覚ましい進歩に目をふさぎ,近代的「かかりつけ医」としての自らの研鑚を忘れてはいないか,率直に反省すべきであろう.
また,患者のほうにも,とにかく病院の重装備の中で受診すれば,高度なより良い医療が受けられるものという安易な誤った認識が定着しつつあったことも、残念ながら認めざるを得ない.
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