特集 環境汚染による健康被害者の救済
公害事例別にみた補償・救済の現状と問題点
イタイイタイ病
加藤 孝之
1
1愛知医科大学公衆衛生学
pp.394-397
発行日 1979年6月15日
Published Date 1979/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205853
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■はじめに
「イタイイタイ病」の名前は「カドミウム」とともに,最近では医学会のみならず,広く一般社会でも普遍的なものとなってきている.昭和43年5月8日に厚生省は公害防止行政の立場から,その本態と発生原因について,「イタイイタイ病の本態はカドミウムの慢性中毒により,まず腎臓障害を生じ,次いで骨軟化症をきたし,これに妊娠,授乳,内分泌の変調,老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となって形成されたものであり,その発生地域は神通川流域の一部に限られている.この地域を汚染しているカドミウムについては,対照河川の流域にも存在する程度の自然界に由来するもののほかは,神通川上流の三井金属神岡鉱業所の事業活動に伴って排出されたもの以外には見当らない」(要旨の一部)といった見解を発表した.以来,イタイイタイ病は公害にかかわる疾患として,患者の登録制度が設けられ,治療費と健康管理費についての公費負担やカドミウム汚染地域住民の健康診断などが行政的に行なわれている.
法的には,昭和44年12月に「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」が制定され,さらに昭和48年10月に「公害健康被害補償法」が施行され,それぞれの施行令,施行規則に基づいて,公害による健康被害に対する救済措置と対策が進められてきている.
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