シンポジウム リハビリテーションと保健活動—障害の受容をめぐって
3)精神科リハビリテーションの立場から
窪田 由紀
1
1九州国際大学法学部
pp.352-356
発行日 1994年5月15日
Published Date 1994/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901037
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●障害概念の検討—精神障害の特殊性
リハビリテーションという枠組みが精神科の中に定着するにはある程度時間を要し,精神障害者は長らく病者としてのみ扱われることが多かったように思う.彼らを病者として位置付けた場合,そこには,治癒像を想定し,それに向けて医療の枠組みの中に抱え続けることを意味する.本人は治ったら退院して働くと言い,家族も良くなれば家庭に引き取ると言いながら長期の入院を続けてきたかつての精神科医療の体制は,障害者としてとらえる視点の欠如によるものであろう.精神科リハビリテーションの出発点は,病者を障害者として位置付け直すことであったといえよう.
精神障害も身体障害をはじめとする他の障害と同じ枠組みで論ずることが,精神障害者の社会的な立場を築き,生活の質の向上を目指すためには欠かせない.精神障害の障害概念について,WHOの定義に基づいて,身体障害と同様に機能障害,能力障害,社会的不利の3つの側面に分けてとらえる蜂矢らの立場はこのような視点に基づくものである1).しかし,対人関係の障害,日常生活管理能力の障害といった,いわゆる生活障害としての能力障害や,偏見も含めた社会的不利という側面は比較的明確にとらえられるものの,機能障害となると,病気の症状や素因との区別が困難である.また,能力障害や社会的不利のための過大なストレスを受けて病気そのものが悪化することもしばしばで,その結果としてさらに障害が重篤化することもある.
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