特集 行動医学へのアプローチ
諸疾患へのアプローチ—心血管疾患
小林 章雄
1
1愛知医科大学衛生学教室
pp.238-242
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901008
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◆はじめに
ひとつの学問分野の発展は,そこで用いられる概念(コンセプト)および方法論の厳密さと妥当性にかかっているとされるが,今日,行動医学領域で用いられる心理・社会的要因(psychosocial factor)に関するコンセプトの中には,心血管疾患,ことに虚血性心疾患とのかかわりを通じて形成されてきたものが数多くみられる.ともすれば「主観的で客観性に欠ける」との批判を受けやすい心理・社会的側面からのアプローチは,虚血性心疾患という明白で重大なend pointとの関連性によって,逆にその厳密さと妥当性が検証されてきたともいえる.心血管疾患にかかわる心理・社会的要因は多様な分野で取り扱われてきたが,大別すると疫学・社会学の領域,心理学・行動科学の領域,および医学の領域などに分けられる.疫学・社会学の領域では,社会的な環境要因が個人にどのような影響を及ぼすかという観点から,心理学・行動科学の領域では,個人のいかなる特質が心血管疾患と結びつくのか,個人の側の特質あるいは行動の変容により疾病を防ぎうるかという観点から,また医学の領域では,どのようなメカニズムによって疾患に結びつくのか,またそれらの害作用を減ずる医学的方策(処方)はあるのかという観点から,主として取り組まれてきた.そして,それぞれのコンセプトや方法論は,さらに多領域にまたがる集学的な検証を経て確立されてきたものである.
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