講座 10代のこころを診る—思春期相談のために・9
強迫神経症
山崎 透
1
Toru YAMAZAKI
1
1国立精神・神経センター国府台病院精神科
pp.643-646
発行日 1993年9月15日
Published Date 1993/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900882
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1.はじめに
まず,最近筆者が出会ったK君のケースを簡単に紹介する.
K君は中学2年生の男の子である.中学1年の3学期にクラブ活動(ブラスバンド部)で彼が望んだパートになれなかったことをきっかけに中2の4月から不登校となり,その後自宅に引きこもるようになった.6月のある夜,テレビ映画の性的な場面を見ていた時に,自分の精液が漏れてしまったような気がしてとても不安になり,自分が汚れてしまったようでそれから手を頻回に洗うようになった.それからは性的なことが頭に浮かんで来るだけで手を洗わずにいられない状態となり,自分専用の石鹸を3日で1つ使い切ってしまうほどであった.また,手洗いが終わった後は母親に“清潔”になったかを何度も確認し,母親がうまく応えられないとパニックとなり,母親に手を挙げるようになった.これをみかねた父親が止めに入ると,「あんたには関係ない.今さらなんだ.どうせおれなんかいないほうがいいんだろう」とエスカレートするという状態のため,母親に連れられて相淡に訪れた.
思春期相談において,このような強迫症状についての相談が持ちこまれてくることはそれほど稀ではない.
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