特集 地域におけるターミナルケア
人はどのように死にたいか
籏野 脩一
1
shuichi HATANO
1
1淑徳大学社会学部社会福祉学科
pp.604-609
発行日 1993年9月15日
Published Date 1993/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900873
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◆はじめに
がんがわが国の死因の首位にあたることは誰でも知っている.私たちの4人に1人はがんにかかって死んでいくはずである.がんのために2分半おきに日本人は死んでいる.すべてのがん患者がひどい痛みを経験するわけではないが,がん患者の4人に3人は激しい痛みに悩む1).気も狂いそうな痛みにさいなまれた時,入院しても,主治医によっては,疼痛を十分に取ってもらえるとは限らない.終わり良ければすべて良しというが,人生の最期を平安に迎えたいと願わない人はいないだろう.山崎章郎氏の『病院で死ぬこと』2)や大熊一夫氏の『ルポ老人病棟』3)等には,人命を救うはずだった専門家の組織である病院が,初めの目的を見失って,弱い病人の自由を奪い,悲惨な最期を強いる光景が克明に描かれている.これらの死に方は,本人が望んだ死の迎え方では無かったはずだ.では私どもは,一体どのような死に方を望んでいるのだろうか? そしてそれを叶えることは難しいのだろうか? 死を迎える場所は病院が一番安心なのだろうか? まず高齢者に意見を聞いてみた.調査の結果の一部をここに紹介し,問題のありかを考えてみたい.
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