保健行政スコープ
遺伝子治療について
椎葉 茂樹
1
1厚生省大臣官房厚生科学課
pp.806-807
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900693
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●はじめに
最近のバイオテクノロジーの進歩により,必要な遺伝子を細胞内に導入することが可能となってきている.米国ではすでに1980年代から遺伝子治療の可能性について国立保健研究所(NIH:National Institutes of Health)を中心として検討が行われてきており,1990年には致命的な遺伝性の疾患であるアデノシンデアミナーゼ欠損症(ADA:adenosine deaminase deficiency)の患者に,世界で初めて遺伝子治療が試みられ,その後様々な疾患に対して遺伝子治療が実施されている.
遺伝子治療については,21世紀の医療において重きをなす可能性もあり,また,有効な治療法の少ない疾患をもつ患者やその家族の遺伝子治療への関心が高まることも予想されている.このような中,わが国において遺伝子治療に関する研究を推進するうえでの基本的問題について,幅広い調査・検討を行うために,厚生大臣を交えた学識者の懇談会である厚生科学会議(座長:杉村隆国立がんセンター名誉総長)に遺伝子治療に関する専門委員会を設けて議論を進めてきたところであるが,平成4年6月に「遺伝子治療に関する中間意見」としてとりまとめられた.
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