特集 小児成人病の予防
母子保健行政における小児期からの成人病予防の課題と展望
田中 慶司
1
,
渡辺 真俊
1
Keiji TANAKA
1
,
Masatoshi WATANABE
1
1厚生省児童家庭局母子衛生課
pp.770-771
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900684
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- 文献概要
〔はじめに〕
近年,バランスを欠いた不規則な食生活や運動不足等により,幼児期でも成人病の危険因子である肥満等が高頻度に見られることが指摘されているが,幼児および児童生徒期における成人病の危険因子と,大人になってからの成人病の発生との関係はいまだ必ずしも科学的に解明されていないのが現状である.
そうした状況のなかで,社会的には,「子どもの成人病予備軍増加」として大きな関心が集まっており,ともすれば子育てに対して親の過剰な不安を高めている面も否定できない.
小児期からの成人病という言葉は大国によれば,
①成人病の危険因子が小児期に見られるもの(肥満児,高脂血症児,高血圧児等)
②小児期に潜在している成人病(動脈硬化の初期病変等)
③小児期にすでに顕在化した成人病(虚血性心疾患,糖尿病,消化性潰瘍等)
という3種類の意味で使われている.
現在,一般的には「小児成人病」という言葉が多用されているが,成人病とは,長年の偏ったライフスタイルを正すことにより予防することが可能な慢性疾患ともいえる.例えば前記の3番目の疾患の中の小児期の糖尿病は,遺伝的要因が強いものであり,厳密な意味ではこれから外れるものと考えられる.
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