特集 公衆衛生50年の回顧と展望
母子保健の回顧と展望
林 路彰
1
Michiaki HAYASHI
1
1国立公衆衛生院
pp.10-11
発行日 1986年1月15日
Published Date 1986/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207172
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■母子保健の変遷
母子保健の理念は本質的には変わらないはずであるが,国の施策を中心とした母子保健活動は,時代とともに大きく変動してきた.わが国における活動の歩みをたどってみると,古くは貧困家庭のような特定の妊産婦や乳幼児の救済という消極的な慈善保護事業から出発し,種々の起伏を経て,すべての母子の健康と福祉を目的とした積極的な保健福祉対策へと転換してきた.
たとえば,1900年ころの軍備拡張と産業革命によってもたらされた労働者層の窮乏化に対して,母子の慈善救済事業の一つとして無料産院(1891)や慈善小児病院(1910)が設けられた.その後は異常に高率であった乳児死亡をいかにして改善するかに主眼がおかれ,内務省の保健衛生調査会が小児保健所の設置案('26)を建議し,大都市の一部に実現をみたことは特筆に値いする.
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