エスキュレピウスの杖
(24)官僚の本質・1
麦谷 眞里
1
Masato MUGITANI
1
1WHO本部
pp.212-213
発行日 1992年3月15日
Published Date 1992/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900546
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1.コモン・センス
「常識」というのか「共通の意識」というのか,大方そんな意味あいをもった英単語だが,改めて言うまでもなく,人類共通の常識というのは,存在しない.研究社の「英和中辞典第5版」には,「人生の経験から身についた思慮分別」とある.しかし,現実の世界では,一方の常識が他方の常識でない例は,枚挙に暇がない.そんな大袈裟な話でなくとも,たとえばWHOの東地中海事務局は,エジプトのアレキサンドリアにあるが,ここの勤務時間は,朝7時半から午後2時半までである.この間,職員は,原則として体憩をとらずに働く.金曜と土曜が休みで,日曜は出勤日である.このままだと,週40時間の労働規定に足らなくなるので,火曜日の午後だけ夕方7時半まで働く.これが,彼らの常識である.したがって,アレキサンドリアに出張すると,一日の時間配分に困ってしまう.朝6時半ごろホテルで朝食を摂ったあと,7時半に事務局へ行き,会議なり協議なり行うが,そのまま午後2時半までデス・マッチなのである.その間,例のどろどろのトルコ・コーヒー(もっとも私は,これが好きだが)しか喫まない.
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