特集 食品衛生の新しい動向
新しい食品を目指す—加圧食品
林 力丸
1
Rikimaru HAYASHI
1
1京都大学食糧科学研究所
pp.630-633
発行日 1991年9月15日
Published Date 1991/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900420
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■はじめに
食品分野への圧力利用に関心が広く寄せられるようになった.このわが国に独自のこの現象の背景には,世界に例がないほど急速に進む都会化がある.かつての農村人と違い,都会人は「食」に利便性を求める.このためには高い保存性と簡便な利用形態が必要だ.これに食品産業は過度の加熱処理とパック食品で応えざるを得ない状況である.しかし,この方法は風味の犠牲を伴うことに,作る側も食べる側も気付き始めた.必然的に「非加熱加工」や「非加熱殺菌」の新しい方法を求めることになる.熱(T)に限界があるなら,圧力(P)を使おうというのが,食品分野への圧力利用の社会的背景であり,筆者の動機となっている.
利用する圧力は一万気圧までの水の圧縮である.幸いなことに,これを達成する装置産業の裏付けもセラミックスの分野で発展している.このような時代を背景に,熱を使うように圧力を使えば,食品を中心とする生物関連領域における研究と産業に大いに役立つという認識が広まってきたといえよう.
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