特集 痴呆性老人の地域ケア
地域ケアの試み—滋賀県水口保健所
辻 元宏
1,2
Motohiro TSUJI
1,2
1元滋賀県水口保健所
2現草津保健所
pp.385-388
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900110
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■はじめに
厚生省の人口問題研究所の報告では,紀元2,000年には,65歳以上の老人が総人口の16.2%,約2,100万人を占めると予想され,その15〜25%に精神科コンサルテーションが必要とされ,痴呆性老人は112万人にのぼるといわれている1).それに備えて,百花繚乱のごとく,緊急かつ重点的な行政施策が行われつつあるが,それにもかかわらず,痴呆性老人の絶対数は増えるだろうから,膨大な額にのぼるであろう将来の行政負担については,予測だに立たないでいる.
福祉・保健・医療の三位一体は行政のお題目である.母子,成人,老人,精神保健,障害者,難病,等々に三位一体の網をかぶせ,連絡調整,協議といった行政用語を住民ニーズとか地域システムといった美辞麗句で修飾すれば,画一的な施策はできあがるかもしれない.しかし,諸機関の統合による機能の止揚(質的向上)は果たされるべくもなく,保健は保健のまま,福祉は福祉のまま,既成の姿を変えることなく,行政特有の待ちの姿勢がそれに加わって,各機関の矛盾が噴出する.こうして,老人が痴呆になるまで待つ,痴呆にならなければ対応できない機構ができあがってしまう.保健は,この機構に取り込まれながら,痴呆対策については後手後手に終始し,予防という中心課題をはずれて,福祉による痴呆対策と何ら変わらないことを行っているのが現状ではなかろうか.
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