発言あり
インフォームド・コンセント—患者中心の医療のために,他
加藤 良夫
pp.361-363
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900105
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私は,医師等の協力を得て,1977年秋に,「医療事故相談センター」を開設した.その反響は大きく,多数の相談申し込みが寄せられた.相談に来られた方々の多くが,「病状等について十分な説明をしてくれなかった」という不満を抱いていた.相談センターは,現在も活動を続けているが,医療側の説明不足に対する患者側の不満は,なお根強いものがあるように感じられる.
1984年に患者側弁護土が中心になって起草委員会を作り,「患者の権利宣言(案)」を発表した.患者の権利として6本の柱が提起されたが,その中で「知る権利」と「自己決定権」が最も論議を呼んだ.医師の中から,「患者が病状等を知ることは真に患者のためになるのか」,「患者は医師の説明を理解できるのか」,「患者は正しい選択ができるのか」といった疑問の声が寄せられた.「知らしむべからず」式の発想法,「医療父権主義」の姿勢からすれば,「患者の権利宣言(案)」の内容は,衝撃的であったに違いない.しかし,患者は,検査や治療の対象ではなく,医療の主体でなければならない.患者の権利宣言運動のキャッチフレーズが,「与えられる医療から参加する医療へ」とされたのは,患者が一人の個人として,主体的に医療に参加していくことの必要性が痛感されたからである.
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