連載 ヒトとモノからみる公衆衛生史・15
結核の時代と療養する身体・3—病者と看護人の抗争史—すれ違う親と子
西川 純司
1
1神戸松蔭女子学院大学文学部日本語日本文化学科
pp.852-854
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210361
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はじめに
看護人……看護婦……と言ふ言葉は世の病者、殊に我々の如き慢的性(ママ)疾患である結核病者に取つて常に脳裏から去らない深い親しみの言葉です1)。
結核病者のほとんどが自宅療養を強いられていた戦前の日本では、家族が「看護人」としての役割を務めることが多かった。今号はこうした療養者の近くで看護していた人々に光を当ててみたい。そこでは療養者と家族である看護人が同じ空間や同じ空気を共有するからこそ生じる感情的なもつれ合いも少なからずみられた。雑誌『療養生活』の特集「私の看護人」に寄せられた読者たちの生々しい声に耳を傾けてみよう(図1)2)。
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