特集 気候危機に立ち向かう—気候変動は公衆衛生の非常事態
Editorial—今月号の特集について
阿彦 忠之
1
1山形県
pp.175
発行日 2023年3月15日
Published Date 2023/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210000
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気候変動は、人類が直面する最大の健康上の脅威!
京都議定書の第一約束期間がスタートした2008年に、本誌でも「地球温暖化対策 —— 京都の約束」と題する特集を組みました。京都議定書を基礎として2015年12月には、世界の全ての国が温室効果ガスの排出削減を約束する国際協定(パリ協定)が採択。パリ協定は多数国間の条約としては異例の速さで2016年11月に発効し、全世界的な取り組みを促しました。
しかしながら、その後も世界各地で大規模な風水害や大干ばつ等の異常気象の被害が絶えず、日本でも「これまで経験したことのない」を枕言葉とする気象警報が多くなりました。Climate change(気象用語では「気候変化」と訳されるようですが、本特集では気候変化も含めた用語として「気候変動」を使用)は、生態系に深刻な侵襲を与え、風水害や新興感染症などの発生を介して数多くの人々の生命や尊厳を奪っており、公衆衛生の非常事態、あるいは「気候危機」ともいえる状況です。国連の「気候変動と健康に関するファクトシート」でも、その冒頭で「Climate change is the single biggest health threat facing humanity」(気候変動は、人類が直面する単一の健康上の脅威として最大のもの)と警鐘を鳴らしていますが、日本の公衆衛生の第一線機関である保健所の関与は乏しく、いまだに危機意識が高いとはいえません。
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