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2021年12月4〜5日に日本ヘルスプロモーション学会第18回学術大会総会in東京が開催されました(公式サイト:https://www.jahp18conf.com)。大会長は順天堂大学国際教養学部教授の湯浅資之先生が務められ、メインテーマは「ヘルスプロモーションの原点回帰—原点に立ち戻り未来の持続可能な社会を考える」でした。世界保健機関(World Health Organization: WHO)がオタワ憲章を発表してからすでに35年が経過していますが、いま一度原点に立ち返り、その成り立ちや今後の展望を考えようという趣旨です。新型コロナウイルス感染症の第5波の感染状況は落ち着いていたものの、感染拡大の危惧により完全オンラインでの開催となりました。私は一日目の特別講演の座長を引き受けていたので、会場に赴き、開会式から参加しました。大会事務局が設置された順天堂大学の教室は、オンライン用のパソコンが距離を取って置かれており、従来の学会での参加者で賑わう風景と違って閑散とした感じがしましたが、ミニマムなメンバーでしっかりと運営されていました。演者席は教室の前に設置され、後ろに座長席があり、コロナ対策は万全でした。
初日は、開会式に続いて湯浅先生の大会長講演「ヘルスプロモーションの原点回帰」から始まりました。湯浅先生は今までのご経験から、「ヘルスプロモーションには理念の顔、実践の顔、科学の顔、政策の顔、スピリチュアルな顔の5つの顔がある」と話され、医学部卒業後の保健所・地域でのまちづくり活動や、国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA)の専門家として赴いたフィリピン、ブラジル、ボリビア、タイなどでの国際保健活動などの多彩なご経験を踏まえて、プライマリヘルスケアとヘルスプロモーションの関連や相違点、まちづくりの実践、エビデンス作り、持続可能な政策としてのヘルスプロモーションについて解説されました。特にスピリチュアルな顔については、アンデス地方の住民との会話から、ヘルスプロモーションの究極の目的が健康ではなく、より良く生きること(Well-being)であり、人生に意味付けを与えるスピリチュアルヘルスに大いに関与するという話は、大変ふに落ちました。職域でも健康経営の上位概念として、Well-being経営なる用語も使われ始めており、私にとってもタイムリーな話題でした。世界の多くの国の国際保健に従事した湯浅先生らしいご講演で、信じられないような絶景に佇む若き湯浅先生が、ヘルスプロモーションと世界中の人々の健康に思いをはせる姿に非常に感銘を受けました。
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