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はじめに
インターネットは1990年代から普及し始め,現在オンラインゲームや動画,SNS等インターネットを介したさまざまなサービスを多くの人が利用している.総務省発表の通信利用動向調査によると,2018年のインターネット利用率は79.8%に上る1).新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,テレワークやオンライン学習の導入が進む中,インターネットは人々の生活に深く浸透している.
一方で,インターネットを過剰に使用し,日常生活に支障が出ているにもかかわらず自分でコントロールできなくなる,いわゆる「インターネット依存(以下,ネット依存)」が社会問題化している.2017年の厚生労働省研究班の調査では,病的なネット依存が疑われる中高生は7人に1人(約93万人)に上ることが推計され2),特に青少年を中心に広がっている.中でもオンラインゲームの使用が多く,国立病院機構久里浜医療センターが2019年に実施した10〜29歳の全国調査の結果では,平日に4時間以上ゲームをしている人の割合は約10%に上り,12%が休日に6時間以上ゲームをしていることが分かった3).
世界保健機構(WHO)は,2022年1月から施行される「国際疾病分類の第11版(ICD-11)」に,「ゲーム障害(Gaming disorder)」を新たな依存症として加える方針を示した4).疾病認定により,ネット依存の実態把握と治療法の進展への期待がますます高まるものと予測される.
しかし,ネット依存を専門的に扱う医療機関や相談機関は全国的にまだ少なく,遠方で受診が難しい,予約が取れない,予約が取れても期間が空いてしまう,といったケースを耳にする.ネット依存の問題を抱える本人やその家族が気軽に相談でき,すぐに適切な支援を受けられる体制づくりが急務といえる.一方,依存症を不安視するあまり家族が本人のネット使用を厳しくコントロールしたり,本人を過度に責めたりなど,ネット依存に関する誤解や偏見も生じており,正しい知識を広めていくことも併せて必要である.
このような背景の下,筆者が所属する株式会社KENZANでは,2019年10月からネット依存に専門特化した回復支援サービス「MIRA-i(ミライ)」の提供を開始した.MIRA-iでは,ネット依存に関する正しい知識を社会に発信しながら,誰もが相談しやすいサービスを目指している.
筆者は,当サービスの立ち上げから心理師として活動している.本稿では,MIRA-iの取り組みとそこで得た経験を紹介し,今後の展開について述べる.
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