映画の時間
—“愛犬”だけが真実を叫び続けた—再会の夏
桜山 豊夫
pp.67
発行日 2020年1月15日
Published Date 2020/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209312
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第一次世界大戦の終戦から1世紀が経過し,2018年にパリで各国首脳が集まって,終戦100周年記念式典が開かれました.わが国は第一次世界大戦では戦場になることはなく,あまり関心を集めませんでしたが,主な戦場となった欧州では,かつてないほどの多くの犠牲者が出ました.戦後処理が第二次世界大戦の遠因となったとも考えられ,後世に大きな影響を与えた戦争と捉えられて,現在でも大戦(Great War)と言うと第一次世界大戦を指すことが多いようです.100年を迎えて,第一次世界大戦を描いた映画もいくつか製作されました.83巻7号で「田園の守り人たち」を紹介しましたが,今月ご紹介する「再開の夏」も第一次世界大戦後のフランスを舞台にした作品です.
1919年,第一次世界大戦が終わった翌年の夏.田舎町の広場の木の下に,ドーベルマンでしょうか,強そうな一匹の犬がいます.猛暑の中で犬が熱射病にならないかと心配ですが,犬は,ある建物に向かって吠え続けています.軍用犬にもなるほどの大型のドーベルマンですから,吠え声も大きく,建物から出てきた男は吠えるのをやめさせようと石を投げつけますが,あまり効果はありません.
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