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はじめに
身体活動の健康上の効果には強固なエビデンスがあるが,世界や国家レベルによる身体活動不足への対策は十分な結果を得ていない状況が続いている1).
2012年に「Lancet」誌において,身体活動不足は大流行(パンデミック:pandemic)の状態であり,健康上の悪影響は肥満や喫煙に匹敵することや,全世界の死亡の9.4%は身体活動不足が原因であるという衝撃的な報告がなされた2).日本においても,2011年の『「健康日本21」最終評価』3)において,一人当たりの1日の歩数がおよそ1,000歩減少し,「悪化している」という厳しい結果が示されている.
2011年当時,筆者は健康運動指導士として神奈川県藤沢市にある藤沢市保健医療財団(以下,同財団)に勤務していた.業務の中心は,特定健診・特定保健指導にも準拠した個別運動プログラムの作成・支援であり,身体活動を支援する職種として個人への効果を感じていた.しかし,藤沢市民全体の身体活動・運動習慣は上記の二つの報告と同じような状況にあり,地域や国家レベルではほとんど貢献できていないことも痛感していていた.この時期,筆者は同財団の理解の下,慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科の後期博士課程に在籍しており,現在も活動を共にする小熊祐子先生に指導を受けて,藤沢市民の身体活動に関連する要因の調査を行っていた.ここでポピュレーション介入の重要性を再認識し,まずは,藤沢市において身体活動促進の取り組みを進めていきたいと強く感じ,その計画を立案した.
本稿では,藤沢市で実施中である身体活動促進プロジェクト「ふじさわプラス・テン」の概要を説明し,また,その実践活動を通して得られた知見を紹介する.
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