特集 公衆衛生の実践倫理
産業保健における実践倫理
藤野 昭宏
1
1産業医科大学医学部医学概論教室
pp.196-201
発行日 2019年3月15日
Published Date 2019/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209096
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はじめに
産業保健は,職場の衛生管理と働く人の心身の健康確保を目的として,産業医,産業看護職(看護師・保健師),衛生管理者および安全衛生スタッフなどの企業内の産業保健チームによって業務が遂行されている.ILO(International Labour Organization)とWHO(World Health Organization)の合同委員会によれば,①全ての職業における労働者の身体的,精神的および社会的健康を最高度に維持,増進させること,②労働条件に起因する健康からの逸脱を予防すること,③雇用中の労働者を健康に不利な条件から起因する危険から保護すること,④労働者の生理学的,心理学的能力に適合する職業環境に労働者を配置し維持すること,が産業保健の目標とされている(1950年に採択).作業を人間に,また,人間を仕事に適合させることがその基本理念である.1999年の第87回ILO総会において「ディーセント・ワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)の概念が初めて用いられ,ILOの活動の主目標と位置付けられた.
本稿では,産業保健における実践倫理について,労働安全衛生法などの法的枠組みを基礎としながら,①安全配慮義務と守秘義務,②両立支援・職場復帰における情報共有,③障害者に対する職場における合理的配慮,の3つの観点から述べる.
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