特集 人獣共通感染症—獣医衛生領域から見た対策
動物のサルモネラ症の感染状況と国内外の対策
江口 正浩
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1国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 細菌・寄生虫研究領域 細胞内寄生菌ユニット
pp.35-39
発行日 2019年1月15日
Published Date 2019/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209054
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はじめに
サルモネラ属菌は,ヒトおよび家畜・家きんに感染する人獣共通感染症の原因菌の一つである.サルモネラ属菌にはSalmonella enterica(S. enterica)とSalmonella bongoriが属しており,S. entericaはenterica,arizonae,diarizonae,houtenae,indica,salamaeの亜種に細分類されている.また,サルモネラ属菌は,Kauffmann-Whiteの抗原表を用いた血清型に分類されており,現在,2,600ほどの血清型が挙げられている.血清型別は菌体表面多糖であるO抗原によって群に分けられ,さらに,鞭毛抗原であるH抗原によって細分化される.サルモネラ属菌のH抗原は,2つの異なった性質を持った構造(相)の間で変異が起こる相変異がある.したがって,2つの構造を持つ複相性と一つの構造(相)を持つ単相性がある.近年,H抗原の第2相を欠くサルモネラ血清型O4:i:-による感染事例の報告が増加している1).
サルモネラ属菌がヒトに感染・発症するとチフス性疾患や胃腸炎(腹痛,嘔吐,下痢を呈する食中毒)を引き起こし,小児や高齢者に感染すると重篤になることがある.一方,家畜・家きんにサルモネラ属菌が感染すると,発熱,食欲不振,元気消失を主徴とし,急性敗血症や慢性的な下痢症を引き起こす.
本稿では,家畜・家きんのサルモネラ症について,その感染状況,国内外の対策の実施状況を述べる.
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