連載 睡眠と健康を考える・2
妊産婦の睡眠
小橋 元
1
,
内山 浩志
2
,
西田 恵子
1,3
,
梅澤 光政
1
1獨協医科大学医学部公衆衛生学講座
2獨協医科大学国際協力支援センター国際環境衛生室
3筑波大学医学医療系産科婦人科学
pp.945-949
発行日 2018年12月15日
Published Date 2018/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209037
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
ヒトの健康や疾病発症には,両親から受け継いだ遺伝要因に加え,長年にわたって曝露した生活環境要因や,さまざまな生活習慣要因などが複雑に絡み合って関与していることが,多くの疫学研究から明らかになっている.
妊娠中は,感情面や嗜好の変化とともに睡眠状態も変化し,さまざまなタイプの睡眠障害が惹起される1).米国National Sleep Foundationの調査2)によれば,妊娠中の睡眠時間は非妊時に比べて平均で40〜50分増加する.1週間に2〜3日以上の不眠症状を訴える妊婦の割合は非妊時よりも高く(84%vs.67%),昼間の眠気や昼寝の頻度が増加する.また近年は,妊娠に伴う母体の体重増加などに起因する睡眠時無呼吸症候群が,妊娠高血圧症候群やそれによる胎児発育遅延の危険要因として注目されている3).一方で,妊娠女性の睡眠障害は,生まれた子どもの将来の健康や睡眠障害あるいは疾病発症に関わっているという報告もある4)〜7).
本稿では,妊産婦の睡眠に関する最近の代表的研究を,われわれの行っている研究とともに紹介する.また,今後のこの領域の研究の課題,展望について概説する.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.