映画の時間
—28歳で余命数カ月を宣告されて36年.人工呼吸器と共に,世界一幸せに生きた男とその家族の奇跡の実話.—ブレス—しあわせの呼吸
桜山 豊夫
pp.795
発行日 2018年10月15日
Published Date 2018/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208996
- 有料閲覧
- 文献概要
今月ご紹介する本作の主人公ロビンは28歳でポリオに罹患します.ポリオウイルスに感染しても,多くの場合は不顕性感染か,ごく軽い症状がでるだけで治癒しますが,100〜200人に1人ほどの確率でウイルスが神経系に侵入し,支配領域にマヒを起こします.侵される部位によっては,特に成人期の感染では呼吸筋にまひを起こし,自発的な呼吸が不可能になることがあります.現在では有効な予防接種があるので,多くの国々で根絶状態にありますが,わが国でも1960年代に北海道を中心にポリオが流行しました.呼吸筋がまひした患者は当時,「鉄の肺」と呼ばれた人工呼吸装置によって救命処置が施されました.わが国では「鉄の肺」は不足しており,また,実用化されたワクチンの供給も十分ではありませんでした.この間の状況は「われ一粒の麦なれど」(松山善三監督/1964年/東宝)に描かれています.
1950年代後半,主人公ロビン(アンドリュー・ガーフィールド)は美しい女性ダイアナ(クレア・フォイ)のハートを射止め,2人は幸せの絶頂にいますが,仕事で滞在していたケニアでポリオを発症します.頸髄への感染でしょうか,首から下は完全にまひし,自力で呼吸することもできません.気管切開し,呼吸器を付けることで何とか救命されたものの,医師からは余命数カ月と宣告されます.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.