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はじめに
横浜市の人口は2018(平成30)年6月1日現在,3,740,497人である1).人口数で横浜市に続く大阪市は2,722,098人であり2),ほぼ100万の違いがあるほど,日本で最も人口の多い都市である.
その横浜市では保育所等待機児童数が2004(平成16)年4月に1,190人と全国一になり,マスコミをはじめ多方面から注目された.保育所数,定員数の増加に向けて積極的な取り組みが行われ〔2004(平成16)年:保育所数289,保育所定員26,689人→2009(平成21)年:保育所数420,保育所定員36,871人〕,2006(平成18)年4月には待機児童は353人まで減少した.しかし,2009(平成21)年4月の待機児童は1,290人と増加し,5年ぶりに全国一となった.さらに,翌2010(平成22)年4月には1,552人という状況になったが,林文子市長の自治体のトップとしての強い意志と果敢な取り組み(以下,待機児童ゼロ作戦)によって,3年後には待機児童をゼロとした.
上記の待機児童ゼロ作戦に先行して,1990(平成2)年の「1.57ショック」以後,国は本格的な少子化対策を進めてきた.児童福祉から児童家庭福祉へ,ウェルフェアからウェルビーイングへ,と方向性を明示し,「エンゼルプラン」〔文部・厚生・労働・建設の4大臣合意:1995(平成7)年〜1999(平成11)年度〕,「新エンゼルプラン」(大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治の6大臣合意:平成12〜16年度)を策定した.
エンゼルプランは,子育てを親や家庭だけの問題とせず,社会全体で子育てを支援していくことを狙いとした.保育所の量的拡大や低年齢児(産休明け保育を含めて)保育,延長保育,一時保育,放課後児童クラブなどの多様な保育サービスを充実し,地域子育て支援センターの整備を図った.また,保育所定員数の増加を推進した.
保育ニーズが高まる中で,待機児解消への取り組みは国によって緊急課題として取り上げられた.2001(平成13)年の「仕事と子育ての両立支援の方針」に基づいて,2002(平成14)年の「待機児ゼロ作戦」,2008(平成20)年の「新待機児ゼロ作戦」,2013(平成25)年の「待機児童解消加速化プラン」と進み,保育所等施設数と定員数は増加し続けている.
2002(平成14)年〜2017(平成29)年の全国の待機児数(表1)3)は,増減はあるものの,施設数,定員数が毎年増加しても,それを上回るニーズがあることを示している.多数の待機児童を抱える行政は,その解消に向けて取り組むものの,困難な課題が山積し,苦慮していた.横浜市の待機児童ゼロ作戦と,その実現は驚きをもって迎えられた.
本稿では,マスコミからも大きく取り上げられ,注目を集めた保育所等待機児解消への対策も含めた,横浜市の全ての子どもを対象とする子育て支援政策の総合化・包括化について,その現状と課題を論じる.
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