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はじめに
世界保健機関(World Health Organization:WHO)は1948年に設立された,国際連合のシステムの中にあって保健について指示を与え,調整する機関である.WHOはグローバルな保健問題についてリーダーシップを発揮し,健康に関する研究課題を作成し,規範や基準を設定する役割を担っているが1),元々,自前の研究組織を持っていないため,外部の専門機関から学術的なインプットを直接入れてもらうべく,それぞれの専門領域に対してWHO協力センター(WHO collaborating centre:WCC)を指定し,協力を仰いできた.
現在,80以上の加盟国から800を超える機関がWCCに指定されているが2),施設によっては実質的な活動成果を上げず形骸化したものがあるのも事実であった.2000年代に入り,WCCは次第に明確なWHOへの貢献を求められるようになった.わが国が所属する西太平洋地域ではWHO西太平洋地域事務局(World Health Organization Regional Office for the Western Pacific:WPRO)が域内の190余りのWCCに呼びかけ,2014年に「第1回WHO協力センターフォーラム」を開催し,WCCの相互の連携強化および活性化を図ってきた.
上記のフォーラムの翌(2015)年,わが国では,WPROより委託を受けた国立保健医療科学院が主催する,ラオス,カンボジア,モンゴル,ベトナムを対象とした「病院の質と患者安全管理研修」を国立国際医療研究センター(National Center for Global Health and Medicine:NCGM)国際医療協力局を含む4つのWCC(聖路加国際大学研究センター,群馬大学多職種連携教育研究研修センター,北里大学東洋医学総合研究所)が協力して実施した.
2016年11月にフィリピン・マニラで開催された「第2回WHO協力センターフォーラム」においてNCGMが「病院の質と患者安全管理研修」について発表したところ,国内のWCCが連携した好事例として他のWCCのみならずWHOの職員からも反響が得られた.これを機にして,WPROからNCGMは日本国内で相互連携体制をさらに進めるように期待されることとなった.そこでNCGMは関係機関へ呼びかけ,2017年4月23日に東京で「第1回WHO協力センター連携会議」を開催した.このような国内のWCC相互連携体制構築事業は,西太平洋地域においては韓国,オーストラリアに次いで3番目の取り組みとなる.
本稿においては,日本におけるWCCの連携の実情と連携強化に関する取り組みを紹介するとともに,今後の方向性について若干の考察を行う.
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