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はじめに
気管支喘息,アトピー性皮膚炎,花粉症,食物アレルギーなどのアレルギー疾患の患者は増加しており,今や国民の約2人に1人が罹患していると言われ,さらに増加傾向にある1).
環境化学物質(金属を含む)を要因とするアレルギー疾患に対する行政施索を立案し施行する政府内の担当は,①水や大気の環境およびその健康影響は環境省,②疾病に対する診療や,室内環境,特定の施設のプールおよび露天風呂,食品,労働災害は厚生労働省,③農産品は農林水産省,④食品の健康リスクの評価や政府内の調整は内閣府,などと分かれている2).
環境中の化学物質については,大気や水質,土壌,廃棄物および地球環境の保全の観点から,環境基本法に基づいて環境基準や環境基本計画が定められている.大気汚染防止法などの排出規制を目的とする法律の他に,化学物質の評価や管理を目的として,「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下,PRTR法)や,「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化学物質審査規制法.以下,化審法),事業者には,化学物質の自主的な管理を促すためのいわゆるSDS(安全データシート)制度があり,感作性化学物質はこれらの化学物質対策の枠組みの中で取り扱われている.
近年,アレルギー疾患の診療については,「アレルギー疾患対策基本法」によって政府の行う対策の基本理念や指針が定められ,国,地方公共団体,医療保険者,国民,医師・医療関係者および学校の責務が明らかにされている.また,労働者に気管支喘息や鼻炎,皮膚炎などを起こす職業上のアレルギーについては,労働災害としての補償や労働衛生上の管理が法律に基づいて行われている.
近代の経済活動の発展に伴う環境や,生活様式,食生活の変化などに特有な何らかの刺激がアレルギー疾患の増加に関与している可能性を探るため,約10万組の親子を対象とした出生コホートであるエコチル調査も開始されている3).また,化学物質や金属,混合物による健康リスクに関する行政施策立案の根拠については,環境研究総合推進費の枠組みで研究が推進されている4).
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