特集 感染症に関するサーベイランス
感染症サーベイランス情報の還元と,地域における活用の取り組み
三﨑 貴子
1
1川崎市健康安全研究所
pp.64-69
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208815
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はじめに
わが国における感染症サーベイランスは,感染症発生動向調査事業として1981年(昭和56年)に開始された1).当初は18疾患であった対象疾患は,オンラインシステムの導入や「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下,感染症法)の施行に伴う施策としての位置付けなどを経て,2017年(平成29年)7月現在,110疾患を超えるまでに拡大している.これらの疾患は,診察した医師や医療機関から届出疾患として保健所に報告され,地方感染症情報センターで集約して国に報告した後,地域の感染症発生動向として地方感染症情報センターが解析を行っている.
感染症サーベイランスの目的は,「感染症の発生情報の正確な把握と分析,その結果の国民や医療機関への迅速な提供・公開により,感染症に対する有効かつ的確な予防・診断・治療に係る対策を図り,多様な感染症の発生及びまん延を防止することにある」とされている.この中で,感染症情報センターは中央と地方のいずれにおいても迅速かつ正確に感染症の発生情報を収集・分析・還元する役割を担っている.そもそも必要な情報が関係機関で迅速に共有されなければ,対策にもつなげることはできない.いかに効率的かつ効果的に情報還元を行うかは,各地方感染症情報センターがそれぞれ工夫しているところである.
上記の一つとして,川崎市(以下,本市)ではインターネット上に感染症情報発信システムを立ち上げ,その中にさまざまな機能を盛り込んで医療機関との連携を図っている.本稿では,本システムの内容と取り組み,今後の活用について紹介する.
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