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感染症サーベイランスとは,感染症への有効な対策を行うため,感染症の発生状況を継続的に把握,監視することである.わが国では1981年に主に小児の急性感染症18疾患を対象とした「感染症発生動向調査事業」が開始されたことをもってこれが始まったと言われることもあるが,伝染病予防法(1897年),トラホーム予防法(1919~1983年),寄生虫病予防法(1932~1994年),性病予防法(1948年),結核予防法(1951年)などによって,医師の届出にもとづく発生状況の把握,それに応じた対策は行われていたわけで,実質的な感染症サーベイランスは古くから行われていたと解釈すべきである.
1999年4月「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)」の施行,伝染病予防法,性病予防法,エイズ予防法の廃止(統合)によって,これまで行われていた感染症サーベイランスが体系化された.「感染症発生動向調査事業」も感染症予防法の中に組み込まれ,明確な法的根拠が与えられることになった.
本稿では,まずわが国における,現行の感染症サーベイランスシステム(体系)を概括する.そしてこれはこのシステムの中のごく一部,特に主要,最重要目的からするとやや外れた部分に当たるのであるが,定点把握対象疾患の全患者数推計,警報・注意報発生システムについて説明する.もちろん,感染症対策を行うための感染症サーベイランスとして,国内だけで発生状況の把握を行うだけでは十分でない.WHOを中心とした国際感染症サーベイランスが行われており,わが国はこれに協力し,情報を取り入れ,かつ発信している.ここでは国外の発生状況の把握システムについても触れない.
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