連載 ポジデビを探せ!・13
ポジデビとソーシャル・チェンジ—起こす変化vs.起こる変化
神馬 征峰
1
1東京大学大学院医学系研究科・国際地域保健学教室
pp.1019-1025
発行日 2017年12月15日
Published Date 2017/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208799
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はじめに
ポジデビは行動変容の手段として有効である.一方,ポジデビには社会変革のツールとしての顔もある.前号(81巻11号)ではArvind Singhal氏の経験をもとに,その重要性に注目した.ここでさりげなく社会変革としたが,元の言葉はSocial changeである.本稿ではそれを原則カタカナ書きのソーシャル・チェンジとしたい.
ソーシャルは“社会”としてよい.やっかいなのはチェンジである.これは日本語では“変化”とも“変革”とも訳せる.社会変化も社会変革も日本語として定着している.“変化”はある状態が性質を変えてしまうこと.一方“変革”には過去を切り捨て新たなものを創造するというニュアンスがある.ソーシャル・チェンジは,コンテキストに応じて社会変化とも社会変革とも訳せる.
“ポジデビで社会変革を”とすると,何やら行動変容と同じように,“計画的に新たな社会を創造しよう”といったニュアンスが感じ取れる.ところがポジデビ・アプローチにおいては,“社会を変える”というよりも,そのプロセスにおいて“社会が変わる”という事態が生じる.そのため,社会変革と言い切るよりも,現段階ではソーシャル・チェンジとしておきたい.
本稿の前半では“社会が変わった事例”としてパキスタンの事例を紹介する.後半では,社会学・心理学におけるソーシャル・チェンジの捉え方を紹介し,そこにポジデビがどのように位置づけられうるかを示したい.
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