連載 ポジデビを探せ!・3
ケース2:院内感染コントロール
小さな波から始まるポジデビ
前田 ひとみ
1
,
河村 洋子
2
,
上野 洋子
3
,
南家 貴美代
1
1熊本大学大学院 生命科学研究部 環境社会医学部門 看護学講座
2熊本大学政策創造研究教育センター
3熊本大学大学院 保健学教育部 博士前期課程
pp.85-90
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208597
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ポジデビ・アプローチによる医療関連感染予防対策
2000年初め,米国では,医療関連感染で死亡する人の数は1日平均275人もいた.これは,国際線のジャンボジェット機が墜落した場合の死者数に相当する.医療関連感染の中で,一般的に問題となるのが,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染である.MRSAはpenicillin系抗生物質methicillinに対する耐性を獲得した黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus(S. aureus)であり,健常な人には問題を起こさない.しかし,抗がん剤の使用や高齢などにより免疫が低下すると,感染が死につながる可能性がある.死に至らないまでも,入院期間の延長や医療費の追加により患者への負担が増す.本来必要のない医療資源を投下することになり,医療現場における潜在的コストも大きくなる.
米国モンタナ州にあるBillings Clinicでは,MRSAをはじめとする医療機関内の院内感染の問題を真剣に捉え対策を講じ,2001年に38件発生したMRSA感染を2005年には6件にまで抑えた.なんと,5年間で感染率を84%減少させるという快挙を成し遂げたのである.
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