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あとがき/投稿申し込み書/著作財産権譲渡同意書
高鳥毛 敏雄
pp.700
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208731
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本号の特集は,2015年10月に厚生労働省が健康局に置いていた生活衛生課と水道課を医薬・生活衛生局に組み替えたという報道に触れたことが契機となり企画しました.衛生監視体制の確立が公衆衛生の基本と考えていたからです.
さて,2003年に食品衛生法は第1条が「この法律は,食品の安全性を確保するために」で始まり,「国民の健康の保護を図ることを目的とする」と終わるように改正されました.また,「健康の保護」という言葉が追加されました.改正前は「公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする」としか書いてありませんでした.健康保護という言葉は,長与専齋が晩年に書き残した随想録「松香私史」に登場します.その中に,「健康保護の事に至りては東洋には尚は其名称さえもなく全く創新の事業なれば,其経営洵に容易のわざにはあらず」とあります.その仕組みについては「極めて錯綜したる仕組みにて,或は警察の事務に聯がり,或いは地方行政に繋がり,日常百般の人事に渉りて,其の範囲極て広く茫漠としてこれが要領を補足すること難く」と書いています.長与は,公衆衛生を人間の健康の保護を図る文明国の大切な仕組みと理解していたようで,その仕組みは,警察でも地方行政でもないと書いています.そのことは,後年,保健所という組織をつくられることによって,わが国で具現化されたとみることができます.
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