特集 がん対策の加速化
個別化がん予防のためのゲノムコホート研究の意義と課題
内藤 真理子
1
1名古屋大学大学院医学系研究科予防医学分野
pp.206-212
発行日 2017年3月15日
Published Date 2017/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208625
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従来のコホート研究とゲノムコホート研究
一般に,予防は三段階に分けることができる.第一次予防は,集団に生じる疾患の新規発症の頻度を減少させようとするものである.健康を維持するために,発病前に予防することを目的とする.第二次予防は,健康の回復と増進のために疾患を初期段階で診断し,治療することを目的とする.第三次予防は,疾患や合併症後の機能改善を目的とし,可能な範囲で身体機能と生活の質の改善を図るものである.
生活歴を疾患発生前に調査するコホート研究は環境要因をより正しく評価しやすく,遺伝子型により環境要因の影響が異なることを示す遺伝子環境交互作用の検討に適した,研究デザインである.従来のコホート研究は,非遺伝的なリスク因子と疾患発症を対象とした検討を中心としてきた.多因子疾患での遺伝情報を含めた解析は技術的にも困難であり,ほとんど検討がなされていなかった.しかし,2003年のヒトゲノム計画完了後,次世代シークエンサーの登場により,技術面でゲノム研究基盤が整備され,遺伝子環境交互作用を検討するゲノムコホート研究に注目が集まるようになった.時代の要請を受けて,2000年以降,国内で大規模ゲノムコホート研究が次々と立ち上げられている.
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