映画の時間
—名声より,わが命よりも大事なもの—うさぎ追いし 山極勝三郎物語
桜山 豊夫
pp.93
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208599
- 有料閲覧
- 文献概要
最近は,帝都医科大学病院の海老名教授役などで人気を博している遠藤憲一ですが,今月ご紹介する「うさぎ追いし」では,東京帝国大学教授の山際勝三郎役で出演しています.山極勝三郎と言えば,ウサギの耳にタールを塗って,世界初となる人工癌を発生させたことで有名です.「うさぎ追いし 山極勝三郎物語」は山極の生涯を描いた作品です.
1863年,明治維新の5年前に,山極勝三郎は信州上田城下(現在の長野県上田市)に下級藩士山本政策の三男として生まれています.江戸期から明治期に至る転換期のなかで,幼少期を過ごした山極の様子が,美しい信州の風景を背景にテンポよく描かれていきます.明治になり,寺子屋を開いていた下級藩士の実家から,東京都で医院を開業していた山極家の養子となり,医院を継ぐべく,養子先の長女(水野真紀)と結婚して東京帝国大学医科に進学しますが,学業優秀な山極は,結局医院を継がずに病理学教室に入局します.そして当時,世界のだれもが為しえなかった人工癌の発生の研究に取り組むことになります.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.