映画の時間
—これは今,起きている現実!国家による市民監視を暴露した衝撃のスクープ—その真相を記録した歴史的ドキュメンタリー—シチズンフォースノーデンの暴露
桜山 豊夫
pp.541
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208475
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これは劇映画ではないのか.と疑問を感じるほど,今月ご紹介する『シチズンフォー』はドラマチックでサスペンスフルなドキュメンタリー映画です.本作品は,2013年に起こった,いわゆる「スノーデン事件」を描いています,と言うか,本作品自体がスノーデン事件の一部と言ってもいいような気がします.
2013年の初め,本作品の監督であるローラ・ポイトラスは,シチズンフォーと名乗る人物から暗号化されたメールを受け取ります.ローラ・ポイトラスは,イラク戦争に取材した『My Country My Country』(2006年,日本未公開)や,グアンタナモ収容所を描いた『The Oath』(2010年,日本未公開)などで高い評価を得ているドキュメンタリー映画作家です.このふたつの作品が,ともに9.11以後のアメリカの抱える課題を鋭く指弾する内容であったことから,“シチズンフォー”は,彼女に衝撃的なメールを送ったものと思われます.冒頭のメールの文面からして,観客は度肝を抜かれます.——暗号の鍵のコピーは作らないように.パスフレーズは安全性強固なものを使うように——.しかも,これらの対策をとっても,それは万全なものではなく,時間稼ぎに過ぎない,と彼(シチズンフォー)は言います.なぜなら,「敵」は毎秒1兆種類ものパスフレーズを推測可能であるし,機器がハッキングされれば,暗号の秘密鍵はすぐに解読されてしまう….敵とはいったいだれなのでしょう.
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