連載 [講座]子どもを取り巻く環境と健康・17
胎児期の化学物質曝露による後天的な遺伝子発現制御への影響
宮下 ちひろ
1
,
小林 祥子
1
,
岸 玲子
1
1北海道大学環境健康科学研究教育センター
pp.531-537
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208473
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胎児期の環境化学物質曝露は,出生時のみならず生後,さらには成人後の健康にまで影響する可能性がある.そのメカニズムの一つとして提唱されている,胎児期環境による児のDNAメチル化の変化について,その示す意味と現在までの疫学研究をわれわれの最新のデータを交えてまとめた.この分野の報告は近年増加傾向にあり,注目の度合いの高まりがうかがえるが,環境化学物質曝露に関してはごく一部の遺伝子のメチル化についての報告が散見されるにとどまり,一定の見解を得るまでには至っていない.今後は,曝露の影響を受ける遺伝子領域の網羅的な探索を行い,より深くメカニズムに迫るとともに,そのメチル化変化がどのように生後の健康・疾病とつながるのか,細胞・動物実験,出生コーホートでの疫学研究で明らかにする必要がある.
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