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2011年3月11日,東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)後の東京電力福島第一原子力発電所(福島原発)事故対応のための緊急作業にあたり,国は同年3月14日から同年12月16日まで,緊急被ばく線量限度を100mSvから250mSvと引き上げた.この間に緊急作業に従事された約2万人の健康状態を継続調査するとともに,緊急作業による健康影響の有無を分析し,その健康管理に役立てるために,2014年より「東電福島第一原発緊急作業従事者に対する疫学的研究」が始まった.研究代表は放射線影響研究所であり,分担研究機関として,放射線医学総合研究所,放射線影響協会,日本原子力研究開発機構,大阪大学,自治医科大学,金沢医科大学,産業医科大学,防衛医科大学校,星総合病院および虎の門病院が担う.
ヒトにおける放射線影響は長期にわたるため,これまで科学的なデータは乏しく,疫学研究が唯一有効な研究方法である.原爆被爆者の研究が最も信頼でき,これまで100mSv未満の被ばくでは,発がん等の発症率において非被爆者と比べて有意な差が認められていないとされている.被ばく線量に関しては,非常に緻密な調査がされているが,線量計で計測されたものではない.それに対し,福島原発緊急作業者は線量計を持ち,より明確な被ばく線量がわかっている.174人が通常作業の5年間の線量限度である100mSvを超えている.しかしながら,当時の作業状況や防護マスク装着あるいは作業日から内部被ばく測定日によって,内部被ばく線量は大きく変わる.今回の研究では個人被ばく線量の再構築に関して,内部被ばく線量の再評価および染色体による線量評価等を検討し,個人被ばく線量の再評価を行う.福島原発作業者は低線量長期被ばくとなり,一回被ばくの原爆被爆者とは異なるため,放射線の影響がどう違うのか注目される.
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