総説
アルツハイマー型痴呆の疫学
酒井 亮二
1,2
,
荒記 俊一
1
Ryoji SAKAI
1,2
,
Shunichi ARAKI
1
1東京大学医学部公衆衛生学教室
2現,琉球大学医学部疫学
pp.333-339
発行日 1989年5月15日
Published Date 1989/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207936
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●はじめに
1835年Prichardは「最近のことを忘れることに特徴のある精神状態」を老人性痴呆(senile dementia)と記述した.その後1907年,精神科医Alzheimer1)によって最初の症例報告がなされて以来,「アルツハイマー病」は老年痴呆の代名詞として一般化しており,最近もアルツハイマー病の疫学に関する総説がいくつか出ている2〜4).米国では戦後のベビーブームがピークに達する西暦2030年に6,000万人の65歳人口を擁し,700万〜1千万人程度の老人痴呆を抱えるという5).このように先進諸国では将来,アルツハイマー病が大規模に流行すると危惧される中で未だ病因不明である当疾患に対して強い関心が持たれているが,わが国での疫学研究は極めて少ない6〜8).この理由は後述するように,本疾患に対する臨床診断の確実性が長い間乏しかったことによる.本論においては,わが国を含めたアルツハイマー病の発生要因に関する最近の疫学研究を総括する.
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