海外事情
ホンジュラス農村の医療事情—自己投薬行為を中心に
池田 光穂
1
Mitsuho IKEDA
1
1大阪大学医学部環境医学教室
pp.208-212
発行日 1989年3月15日
Published Date 1989/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207900
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自己投薬行為(selfmedication,automedicación,イタリック,スペイン語)とは,医療の専門職の監督の圏外で民間の人々によって行われる自己判断に基づく投薬行為のことを指し,治療選択や保健追求行動(health seeking behavior)のひとつである.自己投薬行為は,低開発地域いわゆる第三世界のみならず開発国においてさえも広くみられる一般的な現象である.しかし近代医療の導入が不十分な第三世界では,自己投薬行為はその国の住民の保健追求行動のうち大きな部分を占めている.また医薬品の取扱いに関する法制度が未整備で,かつ間題のある使用例が見られるという点で,開発国の住民の自己投薬行為とは異なった独自の様相を呈している.
自己投薬行為に関する議論は,その現象の解釈をめぐって大きく二つの潮流に分けられる,ひとつはこのような行為を医療化(medicalization)や医原性(iatrogenesis)8)の脈絡でとらえ,住民の保健追求行動に対する有害な干渉と見る態度である5,9,13).他のひとつは自己投薬行為をプライマリーヘルスケアの中に位置づけるために,その行為そのものの問題性を取り除き,公衆衛生教育の普及など1ごよって住民の自助努力を促すものとする立場である1).いずれにせよ経済活動における自己投薬への住民の負担やその実態は,第三世界における健康計画を考える上で等閑視できないものになっている.
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