原著
某農村における集団投薬による高血圧管理の一実験例
南 明範
1
1長崎大学医学部公衆衛生学教室
pp.454-458
発行日 1963年8月15日
Published Date 1963/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202705
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緒言
高血圧管理の問題が取り上げられ,各研究者により管理方式の設定が提唱されているが,その大多数は組織化された官庁・会社工場等比較的管理実施が容易な社会集団である。未組織化の地域集団すなわち農村在住者等を対象とする場合は,受診率の面からも同一集団の継続管理には管理経験者にしか味わえない蔭の努力と忍耐が必要である。著者は,昭和32年より長崎市に隣接するN農村において,集団検診・健康管理を続けてきており,その活動方式は既に報告した1)。継続管理を行なう場合各個人に就て,一般生活指導あるいは治療指示の効果を把握する事が必要であるが,その実態を確実に掴む事は因難である。一般生活指導の効果は,家庭訪門あるいは栄養調査を行なっても断片的に実態を知るのみであって,農村に残る封建性や経済問題等の社会要因を含めての実態を如何に掴み指導するかは常に当事者の行き詰るところである。さらに治療指示の効果に至っては,農繁期という特殊事情等もあって,当然入院加療を要する高血圧者でも労働の可能な限りでは,自宅静養や継続治療は周囲の状況からも実施され難いのが現状である。著者は,薬剤投与により一般生活療法の重要性や継続治療の必要性を本人を通して家族にも認識させ,かつ頻回に行なう血圧測定によりcase by caseで徹底的に血圧に関する知識の浸透をはかる目的で,集団投薬による管理実験を行なった。
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