特集 社会と健康
性と年齢からみた疾病動向
大野 良之
1
,
久保 奈佳子
1
OHNO・Yoshiyuki
1
,
KUBO・Nakako
1
1名古屋市立大学医学部公衆衛生学教室
pp.745-750
発行日 1988年11月15日
Published Date 1988/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207809
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■はじめに
わが国の全死因年齢訂正死亡率は,過去65年間に男で約1/5,女で約1/8,乳児死亡率は男女とも約1/30に減少した(表1).これを反映して,1921〜1925年に男42.1歳,女43.2歳であった平均寿命は,1987年には男75.6歳,女81.4歳となり,男で33.5歳,女で38.2歳の驚異的な延びである.平均寿命の延びは女でより大きく,近年になるにつれてその男女差(1921〜25年に1.1歳,1987年に5.8歳)もより大きい.つまり,近年になるにつれて男がより死亡しやすくなっていると考えられる.この男性易死亡性は,生物学的男女差のみならず,生活環境要因とその変化(社会変化)との関わりの男女差も示唆する.一方,ほとんどの疾病の頻度は年齢により異なる.性と年齢はヒトのきわめて明確な特性で,ある疾病頻度を性別・年齢別に観察すれば,その疾病の発生死亡メカニズムについて多くの示唆が得られるとともに,その疾病と社会との関わり(疾病の社会性)をうかがい知ることができると考えられる.
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