天地人
年齢今昔
用
pp.1211
発行日 1983年7月10日
Published Date 1983/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218360
- 有料閲覧
- 文献概要
日本人の平均寿命は戦後急速に延びたが,だいたいここらで頭打ちであろうという.それにしてもわが国は世界でも有数の長寿国ではある.最近の新聞にでた総理府発表によると昭和57年10月で日本の人口が1億1869万になり,そのうち65歳以上が9.6%を占めるという.各方面で高齢者社会への対応が論義されるのも当然である.
老人問題を背景とした小説で「恍惚の人」というのが話題になっていたことがあったが読んでいない.私にとっては深沢七郎の「楢山節考」が強烈な印象を与えた作品として記憶に残っている.これは棄老伝説を題材としているが,じめじめせず,深沢七郎独自の不思議な雰囲気が語られる親棄の話である.1956年の第1回中央公論新人賞の当選作として世に出た.点の辛い批評家としても知られた小説家の正宗白鳥氏がこの楢山節考を評して「人生永遠の書の一つ」とまで言って激賞したという.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.