特集 社会と健康
生活と健康
野原 忠博
1
Tadahiro NOHARA
1
1杏林大学保健学部
pp.740-744
発行日 1988年11月15日
Published Date 1988/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207808
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■健康生活とライフスタイル
健康の概念は時代と共に変遷してきた.けれども老・病・死を避けながら,健康な生活を生涯にわたって保持していくにはどうしたらよいのかはいつの時代でも問いつづけられた課題である.健康という言葉には健康な生活という考え方が含まれているとみてよい.しかし人々の生活のなかには,健康によい結果をもたらすものと,そうではないものが複雑に関連しあっている.したがってその時代,地域社会に特有な健康像が形成されることにもなる.
わが国の場合,当面する健康問題の多くは,かつてわれわれが経験したことのない,戦後40数年間にわたる「平和」と,高度経済成長のもとでの「豊かさ」という,社会的状況のもとで噴出している点を見落としてはならない.貧しさを基準とする価値は持ってはいるものの,豊かさを基準とする価値観と,それに基づく行動体系を確立するまでには至っていない.新たな視点から生活全般を見直し,解決への手がかりを得ていかなければならない.
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