特集 地域医療計画と公衆衛生
地域医療計画における歯科保健医療
間宮 ゆかる
1
,
若林 良孝
2
Yukaru MAMIYA
1
,
Yoshitaka WAKABAYASHI
2
1国立公衆衛生院研究課程
2神奈川県厚木保健所,神奈川県衛生部健康普及課
pp.248-252
発行日 1988年4月15日
Published Date 1988/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207661
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■公衆衛生的視点から見た歯科保健医療
人が自分の生涯を考えたとき,多くの人々は,健康で,幸福な生活を送りたいと願っているだろう.しかし,この願いが妨げられたとき,人は妨げるものを身体的・精神的苦痛としてとらえるだろう.「病気」は,その苦痛を引き起こす一つの因子であり,「歯科疾患」も,生命を左右する病気に比べれば,緊急性や危険性の少ない病気ではあるが,苦痛を生じさせる一つである.
たとえば,歯科の2大疾患の一つである歯槽膿漏は,痛みなどの自覚症状がなく徐々に進行し,歯が1本1本抜けてゆく.歯が1本抜けたとしても,その時は,人は身体的にも精神的にも余り苦痛とは感じないだろうが,それがたび重なり,多数の歯が抜けた時には,食物を満足に噛めない事態を引き起こしている.成人病が死亡原因の上位を占める現代において,健康な生活を維持する上では,食生活が一つのポイントであろう.従って,人々にとって「噛めない」という事は,食生活が乱れる引き金の一つとなり,健康な生活を営む事を妨げる一つの因子となると思われる.そして「噛めない」という事は,人々にとって,日常生活の上で,身体的・精神的苦痛となってゆくと思われる.
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