特集 公衆衛生50年の回顧と展望
農村医学の回顧と展望
柳澤 利喜雄
1,2
Rikio YANAGISAWA
1,2
1千葉大学
2自治医科大学
pp.35-37
発行日 1986年1月15日
Published Date 1986/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207186
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■はじめに
農村医学と私との関係を述べる前に,私がなぜ衛生学公衆衛生学と関係するようになったかのいきさつに触れる.昭和5年春,千葉医大を卒業すると,すぐ衛生学教室の松村粛先生の教室に入局した松村先生は衛生学者として優れた学識を持っておられたばかりでなく,人間形成の道にも造詣が深かった.仏教,特に浄土真宗の近角常観師に終生教導を受けておられた.私が生涯仏教に縁を持ち,その指導原理に生き続けてきたのは,松村先生との縁が誠に大きい.松村先生は人間的魅力の溢れた,学徳兼備の大学教授だった.だから松村門下の同門から,谷川,相磯両学長が出たのである.松村先生は機会あるごとに「金言」と呼ぶ諭を教えられた.「学門において進歩するも道徳において退歩するは退歩するなり」(生物学の後藤清太郎先生の言葉)がそれであった.
松村先生のほかに,もう一人の先生が私にはある.後に厚生省国立公衆衛生院長になられた古屋芳雄先生である.私の学生当時,古屋先生は千葉医大助教授として衛生学教室に在職されておられた.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.