特集 学校保健—心の健康づくりを中心に
学校保健管理における心の健康問題
武田 真太郎
1,2
Shintaro TAKEDA
1,2
1和歌山県立医科大学衛生学教室
2和歌山県湯浅保健所
pp.721-725
発行日 1985年11月15日
Published Date 1985/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207137
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■はじめに—変貌する子どもの生活
明治以来の近代化,都市化などといわれる社会の変化が,今では,子どもの遊びや食・住生活のいわゆる西欧化をもたらし,これが彼らの生活時間構成,運動量,摂取栄養量などをも変えてしまった.この生活の質的変化が,身長の最大発育年齢や初潮年齢にみられる発育促進現象として端的に現れてきている1).しかも,こうした生活のいわゆる都市化は,高度情報化社会の進展に伴って,全国どこででもみられる変化になっている.こうして,現代っ子たちは,寝つきが悪く,翌朝になっても十分に目覚めないままに学校に登校し,午前中は肩こりや疲労を強く訴える2).
かつてのように日暮れまで近所の友だちと遊びほうけて,くたくたに疲れて帰ってきていた子どもたちにとっては,病気でもない限り寝つきが悪いなどということは考えられず,常にさわやかな朝の目覚めがあり,肩こりなどは経験したこともなかった.そして,崖にのぼり,丸木橋を渡り,ときには杉の木から落ちるような毎日の遊びのなかで,的確な判断力や敏捷性・柔軟性・平衡感覚などの身のこなし方の基礎を自然に体得してきた.また,空地があって,そこに集まる年齢の異なる子どもたちの石蹴りや陣取りなどの遊びをとおして,子どもたちは運動能力だけでなく,仲間同士のつきあい方を学んだ.そこでは,年下の子をいじめもしたが,いたわり,かばうルールも,先輩から順送りに教えられてきていたのである.
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