特集 肺がん
現状における肺がん臨床の基礎的問題点
山口 豊
1
,
木村 秀樹
1
,
岩井 直路
1
,
斉藤 幸雄
1
,
下山 真彦
1
,
田宮 敬久
1
Yutaka YAMAGUCHI
1
,
Hideki KIMURA
1
,
Naomichi IWAI
1
,
Yukio SAITO
1
,
Masahiko SHIMOYAMA
1
,
Norihisa TAMIYA
1
1千葉大学医学部肺癌研究施設外科
pp.168-175
発行日 1983年3月15日
Published Date 1983/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206664
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昨年の厚生省の人口動態統計分析によれば,長らく死亡の主位の座を占めていた脳卒中を抜いて,がんによる死亡が死亡順位1位におどり出たという.がんによる死亡の中で肺がんの死亡は男性は胃がんに次いで2位,女性では胃がん,子宮がんに次いで3位を占めている.しかし肺がんによる死亡数は年々確実に増加しており,推計学的には近い将来に胃がんのそれを凌駕するといわれている.
肺がんの研究や診療が本格的に行われるようになったのはこの20年間位のことであるが,その進歩にはめざましいものがある.しかしその反面,その治療成績は必ずしも満足すべき向上がみられているとはいえない.胃がんや子宮がんが罹患例数が多いのにその治療成績が向上してきているのは,胃がん・子宮がんに対する集団検診を中心とした診断体系が国の行政の中である程度確立されてきていることにほかならない.肺がんではその罹患数も確実に増加しているが,死亡数もそれに比例して増加してきている.胃がんや子宮がんがその診断体系の中で早期例を数多く発見することができ,かつ治すことができるようになってきているのに,肺がんの死亡数が多いということは,それだけ治るがんが少ないことを示している.われわれは近年集学的治療による治療成績向上のための対策の開発,考案の努力を懸命に重ねてきているが,これらの治療は延命効果を僅かではあるが期待し得るようになってきている.
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