発言あり
老人保健法
pp.129-131
発行日 1983年3月15日
Published Date 1983/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206657
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高齢者への尊敬をもって遂行したい
官僚が国の弱体な層を救済するための法律を起案する.国会は法に依る財政上のメリットを認めて成立させる.法律は国民の一部に福祉を保証するが,他の一部には犠性を負荷する.誰が本当にしあわせになり得て,その負担を別の誰がになうのか? 行財政改革の時代に厚生省ではこの法律担当の部局が増えて,従来までは福祉だ,医療だ,公衆衛生だとわかれていた行政を整理統合して1本となし,市町村自治体に対しては中央集権体制を確立させ,医療に関しては財政支出を節約し,更に医政についてのイニシアチーブをとるというのが真相ではなかろうか? さらに将来は,この法を突破口として健康保険そのものを強く統制する狙いがあるように考えられる.問題は,そういうことで,果たして老人の,そして国民のヘルスについてのしあわせが期待出来るか,ということである.
たとえば,保健所運営協議会のように民主的運営を審議推進するための制度も,自助や自治の心の根づかぬ地域ではセレモニーとしての存在でしかない.老人保健法による事業を何気なく受けとり,何気なく実施していると,自治体の財政がおびやかされるか,さもなくばベルトコンベア・システムのお粗末集団検診が実施されて,しかも地域医師会は必要のないエネルギー消費を強制される,ということになりかねない.
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