特集 期待される保健所活動
保健所のリハビリテーション事業の視点
大田 仁史
1
Hitoshi OHTA
1
1伊豆逓信病院第二理学診療科
pp.744-748
発行日 1982年11月15日
Published Date 1982/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206607
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老人保健法でいうところの機能回復訓練をどう解釈するかは別として,心身の機能になんらかの障害をもって生活している人に対して,それ以下に機能が落ちないように,また少しでも自立度の高い生活ができるよう援助することは,健康老人に対するウエル・エージングのための援助をすることよりはるかに重要である.
ウエル・エージングを身体面について考えると,図1のようにライフサイクルの上でそれを支える要因と悪影響を与えるであろう要因が数多くあることが想像される.一たび,脳卒中のような,生涯にわたる後遺症をもつ疾患に罹患すると,心身の不活動はたちまち廃用的な合併症を引き起こし,ねたきりへの道をたどってしまう.ねたきり老人が増えることが,本人や家族の苦しみもさることながら社会的にも経済的にも大きな問題であることから,これに対する積極的な施策が必要なことは当然である.いわゆる健康老人も加齢と不活動が原因でその危険がないとはいえないが,運動障害をもった老人の不活動はより危険である.運動障害の原因は何らかの疾患によることが普通であるから,その対策には医学的要素が多く個別的色彩が強くなる.生活の現場でこれらの諸々の問題を解釈するには,現状では医療・福祉環境があまりにも悪い.しかし手をこまねいているわけにもいかないというのも実情である.
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