特集 医学教育と保健所
教育の場としての保健所への期待
松野 喜六
1
Kiroku MATSUNO
1
1京都府立医科大学公衆衛生学教室
pp.79-82
発行日 1982年2月15日
Published Date 1982/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206469
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■背景
1979年のわが国の届け出医師数は150,229人,人口10万対129.4,医師1人あたり人口は773人となったが,その業務種類別比率をみると,病院・診療所のいわゆる臨床医は95.3%,臨床以外の教育機関又は研究機関の医師2.6%,衛生行政又は保健衛生業務の医師1.4%等となっている.図に1955〜79年のそれらの推移を示したが,衛生行政又は保健衛生業務の医師は,実数,率とも非常に低く,きわだって減少している.たとえば,保健所の医師定員充足率は40%以下といわれている.いずれにしても,わが国の医師の圧倒的多数は臨床医であることになる.医学教育の目標については牛場1)の4項目,衛生・公衆衛生学については1976年の衛生学・公衆衛生学教育協議会に提案された5項目2),西川3)の4項目などが示されているが,医学教育実態としては,臨床医の養成に傾斜しがちである.中川4)が記しているように,わが国の公衆衛生の実務からいわゆる診療行為が全くといってよいほど除外(保健法第4条)されているので,公衆衛生を遠距離からとらえるむきが医学教育者の中にもある.とくに感染症の制圧に成功してきている現況において,臨床医学の診断テクノロジーの著しい発達は,細分化した専門領域の発展を促し,保健学の発展の遅れも手伝って,医師・医学生を技術・専門志向に傾斜させている.
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