連載 リレー連載・列島ランナー・65
今,保健所への期待が高まっている,それにどう応えるのか
柳 尚夫
1
1兵庫県豊岡保健所
pp.571-574
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401103079
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なぜ,保健所への期待が高まっているのか
私は,保健所勤務が大阪府と兵庫県を合わせて,30年を超えている公衆衛生医です.仕事を始めた当初からずーっと「保健所黄昏論」を周りから聞かされてきました(もちろん私はそのようには全く思っていなかったですが).しかし,この数年は,保健所に対しての「期待」の声が高まっているように感じています.
そのように感じるようになったきっかけは,「地域保健対策の推進に関する基本的な指針改正〔平成24(2012)年7月31日〕」です.この指針見直しが議論されている最中に,東日本大震災が起こったことは,内容に大きな影響を与えました.それまでの指針では,保健所の役割が,感染症対策などを中心に「健康危機管理」が強調される一方,地域保健活動では,市町村と棲み分けて役割が重ならず,市町村の求めに応じて支援をするのが,保健所の役割と定められていました.ところが,見直された指針では,市町村の業務の把握や支援を保健所が積極的に行うことになりましたし,地域での医療介護体制作りや,高齢者や障害者への支援システム作りについても,主体的な役割を担うことになりました.これは,東日本大震災で,深刻な被害を受けて機能停止に陥った市町村があったことから,もし保健所が,市町村の保健福祉,特に介護保険や障害者のサービス実態などを把握していなければ,適切な被災地支援ができないことや,医療介護の連携に保健所の関与が必要であることを国をはじめ多くの公衆衛生関係者が気づいたためです.
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